新着情報

Dr.ブランチのカンファレンスを行いました

先週の金曜日(6月14日)に本年度1回目のブランチ先生によるカンファレンスを開きました。これは、年に2回、英国出身で湘南鎌倉病院に勤務されているブランチ先生を迎え、当院の研修医が症例提示をして診断の道筋を考えるものです。ブランチ先生は、イギリス英語で時折日本語を交えながら、分かりやすく話されます。日ごろから英語に親しんでいないわれわれは、なかなか聞き取りが難しいのが現状ですが、皆楽しく勉強しています。

今回、提示された症例は、70代の女性で、夕食の準備をしている最中に倒れ、救急車で運ばれてきました。その際、吐き気、失禁、左片麻痺がありました。カンファレンスでは、ここまでの段階で、どのような既往歴を考えるか、基礎疾患は何か、等の議論がなされました。様々な疾患を想起し、疑って問診、診察をすすめることが必要です。次のスライドで、この患者では糖尿病、高血圧、間質性肺炎、胆嚢癌、胃癌切除後、C型肝炎の既往があることが示されました。また、頭の症状が現れる上流には、心臓の異常があることが指摘され、この患者の一見正常な心拍数62回/分、血圧94/50は、冠動脈に十分な血液が灌流されていない可能性があることが指摘されました。正常所見を、この患者では異常と判断することは、臨床の場ではできそうだが難しいことだと感じました。その後、心電図でV4,V5のT波が陰転化、頚部MRIアンギオで右前大脳動脈、右中大脳動脈、右総頚動脈に閉塞、両上肢の収縮期血圧の左右差(右150mmHg、左9mmHg )、心エコーで上行大動脈に浮遊弁、胸部造影CTで上行大動脈解離が認められました。最終診断はスタンフォードA型の大動脈解離でした。この患者のように胸痛や背部痛を訴えない大動脈解離があることを知っている必要があります。

症例のカンファレンスの後、ブランチ先生の講義もありました。今回は1枚の写真から、点状出血とsplinter hemorrhageの鑑別について話されました。細菌性心内膜炎の診断にはDuke分類が重要だが、splinter hemorrhageはその分類の基準には含まれておらず、けっして稀な所見ではなく、それだけでは診断的な価値は少ないのです。

その後、居酒屋でブランチ先生を囲んで、楽しい飲み会を行いました。

長野日赤での初期臨床研修を考えているあなた。是非、あなたも来年あるいは将来、ブランチの会に参加してみませんか。お待ちしています。

長野赤十字病院臨床研修センター 天野芳郎

1597 .JPG1560755767221.jpg1560755742955.jpg 長野赤十字病院臨床研修センター 天野芳郎