診療科・部門
婦人科

概要

婦人科では、内視鏡を使った手術と悪性腫瘍の診療に力を入れています。内視鏡手術は、細いカメラや鉗子を使って体の中を覗きながら手術を行う方法です。開腹手術のような大きな傷を作ることなく、小さな傷や、全く傷を作らずに手術を行うことができるため美容的で、術後の痛みも軽く、社会復帰が早いのが特徴です。
当院では、腹腔鏡手術子宮鏡手術ロボット支援下手術経腟腹腔鏡手術(vNOTES)などを取り入れて、患者さんごとに最適な手術をご提案しています。
日本産科婦人科内視鏡学会認定の腹腔鏡技術認定医が3名所属し、そのうちの一人は長野県内では唯一の子宮鏡技術認定医です。また、婦人科腫瘍専門医が1名、がん治療認定医4名の体制で診療に当たっています。
長野県内での若手産婦人科医師を対象とした腹腔鏡セミナーを開催し、県内における内視鏡手術の教育を行っています。

診療の特色

ほとんどの良性疾患の手術は内視鏡手術で行うことができます

  • 婦人科においては、子宮筋腫や卵巣の嚢胞、子宮内膜症などが代表的な良性疾患です。これらの疾患は通常、生命に関わるものではありませんが、生活の質を下げることがあります。
  • 子宮筋腫や子宮内膜症は、大きさや重症度の差が非常に大きく、手術の難易度も症例によって異なります。例えば子宮筋腫なら、5g程度から数kgに及ぶこともあります。子宮内膜症は、骨盤の中で子宮や卵巣、膀胱や腸などに癒着が生じる疾患ですが、癒着の場所や程度も様々です。
  • 当院では、難易度の高い症例についても積極的に内視鏡手術を行っています。上限は決めていませんが、約9割の良性疾患の手術を内視鏡手術の適応としています。
  • 2013年以降の手術において、開腹移行率(内視鏡手術で開始し、途中で開腹手術に変更になること)は約0.3%です。
  • 他院で「腹腔鏡は適応外」と言われた患者さんでも、当院で腹腔鏡下手術を受けることができる場合もあります。
20202021
腹腔鏡開腹腹腔鏡開腹
子宮全摘術5784612
筋腫核出術12293
卵巣腫瘍523423
異所性妊娠110140
合計1321311118
腹腔鏡手術率91%86%
開腹移行10

腹腔鏡手術について

腹腔鏡手術とは、おなかに数カ所小さな穴をあけ、炭酸ガスを入れてスペースを作り、そこからスコープや器具を入れて手術を行う方法です。当院では2013年より多くの手術を腹腔鏡手術に切り替えており、ロボット支援下手術も含めると年間130-150件程度の腹腔鏡手術を行っています。

当院での腹腔鏡手術の様子

子宮鏡手術について

子宮鏡下手術とは、子宮の中に発生した子宮筋腫やポリープを内視鏡下に切除する手術です。偽閉経療法後に3-4cm、突出率30%以上の子宮筋腫、全ての子宮内膜ポリープ、帝王切開瘢痕症候群などを適応としています。当院では長野県で唯一の「子宮鏡技術認定医」が手術に立ち会っています。

ロボット支援下手術について

2018年4月から婦人科疾患でも保険診療となり、当院では2020年12月から実施しています。現在当院で実施できるロボット支援下手術は、①良性疾患に対する子宮全摘術、②早期子宮体がんに対する子宮悪性腫瘍手術、子宮脱に対する仙骨固定術です。

手ぶれ補正機能付きで3Dによる立体視ができ、また自由度の高い鉗子操作が可能であり、より繊細な手術が可能となります。

①コンソール

術者はここからロボットアームを操作しています

②ペイシェントカート 

当院で使用している、da Vinci X

経腟腹腔鏡手術(vNOTES)について

vNOTESとは、お腹に傷を作らない腹腔鏡下手術で、カメラや鉗子などを全て腟から挿入します。従来の腹腔鏡手術よりもさらに低侵襲で、回復も早くなります。現在は大きくない子宮に対する子宮全摘術や、癒着のない卵巣嚢腫を適応としています。

vNOTESで手術を受けられた患者さんからは、「傷もないし、本当に手術をしたんですか?」と言われるくらい好評です。

悪性腫瘍の手術でも最大限低侵襲手術を取り入れています

  • 初期の子宮体がんや子宮頸がんに対する手術だけが保険適用となっています。
  • 当院では、初期の子宮体がんに対して腹腔鏡下手術やロボット支援下手術を行っています。骨盤リンパ節郭清、傍大動脈リンパ節郭清についても腹腔鏡で行うことができます。
  • 子宮頸部異形成や、一部の卵巣腫瘍(明らかに癌ではないが、悪性の可能性が否定できない)に対しても、同意が得られた場合に限り腹腔鏡下手術を行っています。

長野県内外での腹腔鏡手術教育への貢献

  • 実は、10年ほど前まで、長野県では大学病院などいくつかの限られた施設でしか腹腔鏡手術を受けることができませんでした。現在ではかなり一般的となった、腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)や、子宮筋腫核出術(LM)はほとんど行われていませんでした。
  • 当院では2013年よりTLHとLMを導入し、症例数を重ねてきました。しかし、広い長野県では当院だけで全ての患者さんを受け入れることはできません。
  • そこで当院の堀澤医師は、2016年より県内での腹腔鏡セミナーを継続して主催し、腹腔鏡手術の普及に努めています。写真のように、トレーニングボックス(当院の堀澤医師が考案し販売しています)を用いた腹腔鏡下の縫合結紮指導や、県内外から腹腔鏡手術のスペシャリストを招いて講演をお願いしたり、若手医師と交流してもらっています。
  • さらに、全国の産婦人科医師を対象として、オンラインで手術動画を見ながら手技を学ぶセミナー「OSVD(Online Surgical Video Discussion)」を運営しています。このセミナーは現在、手術を学ぶ外科系医師のためのプラットフォームOSP(Online Surgeons Platform)に発展し、2800名を超える医師が登録しています(2023年11月現在)。
  • これらの活動が評価され、堀澤医師は令和4年度 日本産科婦人科学会教育奨励賞を受賞しました。
  • 詳しくは、堀澤医師へのインタビュー記事をご覧ください。
腹腔鏡セミナーの様子
腹腔鏡セミナーの様子

長野赤十字病院で行っている腹腔鏡下手術・内視鏡手術

婦人科悪性腫瘍早期子宮体がんに対する腹腔鏡下子宮体がん手術(保険適用)
婦人科良性腫瘍子宮筋腫腹腔鏡下子宮筋腫核出術、腹腔鏡下子宮全摘術、子宮鏡下筋腫切除術
子宮内膜症腹腔鏡下子宮内膜症病巣切除術(深部内膜症も含む)、腹腔鏡下子宮全摘術
卵巣腫瘍腹腔鏡下付属器摘出術、腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術
帝王切開瘢痕症候群腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術
子宮脱腹腔鏡下仙骨腟固定術