概要
診療内容
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)をはじめとする脳血管障害、頭部外傷、てんかん重積発作、髄膜脳炎、といった突然発症する疾患は、脳の一部をたちどころに壊してしまい、麻痺や認知症などの後遺症を残す場合があります。脳を保護し後遺症をできるだけ少なくするためには、一刻も早い専門治療を始めなくてはなりません。これらの緊急を要する脳神経疾患に専門医が素早く対応できるよう、当院では2013年に脳神経救急センターを立ち上げています。
診療体制
1年365日24時間、脳神経を専門とする医師が病院内に必ず常駐し、緊急治療を要する患者さんが来院し次第、対応します。また地域の基幹病院として、他の医療機関で脳神経の救急疾患が発症・診断された場合、医師同士がより迅速な連携・搬送ができるように常駐医は24時間対応可能なホットラインを携帯しています。ホットラインに連絡が入り次第、受け入れの準備を開始しています。
対象疾患
脳卒中
脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が損なわれる状態を脳卒中(脳が突然悪くなるという意味)と呼びます。血管が詰まる場合を脳梗塞、血管が破れて脳の中に出血した場合を脳出血、脳の周りに出血した場合をくも膜下出血と呼びます。
症状としては、突然に起こる頭痛、意識障害、呂律不良、片麻痺(片方の手足の動きが悪い)、感覚障害(片方の手足のしびれや鈍さ)歩行障害(ふらついて歩けない)、などです。
脳梗塞
原因
脳の血管が詰まってその先の脳が低酸素で壊れてしまう状態を脳梗塞といいます。脳の血管が詰まる主な原因は二つあります。
脳血栓
高血圧や糖尿病、高脂血症などによる動脈硬化によって血管が固く狭くなり、あるときに突然詰まります。
脳血栓にならないためには、動脈硬化の予防と治療が最も大切です。高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満、が動脈硬化の主な原因です。これらをしっかりと管理しましょう。
脳塞栓
不整脈などがあることで心臓の中で血流の淀みが生じると、そこに血液の塊ができてしまいます。これが心臓から飛び出して脳の血管を突然詰めてしまうものを(心原性)脳塞栓とよびます。大きな血管が詰まることが多く、普段健康な人が突然重篤な状態(片麻痺や認知症)になってしまいます。
脳塞栓にならないためにはまず、不整脈に気付くことが重要です。ほとんどの場合は脈のリズムがバラバラになる心房細動が原因となります。常に不整脈である場合(慢性心房細動)と、時々不整脈が出る場合(発作性心房細動)とがありますが、どちらも脳塞栓の原因となります。このような異常が見つかったときには、血液が固まりにくくなる抗凝固薬を内服して脳梗塞を予防することがとても重要です。
治療
不幸にして脳梗塞になってしまった場合、時間とともに脳の神経細胞が死んでゆきます。しかし脳の神経細胞が死滅する前に詰まった血管を再開通させることができれば、脳を守り、後遺症を少なくすることができます。脳梗塞の発症から4時間30分以内にrt-PAという血液の塊を溶かす注射薬(血栓溶解療法)、あるいは6時間以内にカテーテルという細い管を用いて血液の塊を取り除く血栓回収療法がその治療です。ですから脳梗塞の発症後は1分でも早い専門医による診断と治療が必要です。脳卒中学会ではこれらの治療が全国どこでも速やかに実施できることを目的として、専門的な治療ができる施設を2019年に一次脳卒中センターとして指名しました。当院も一次脳卒中センターとして、血栓溶解療法・血栓回収療法が可能な限り迅速にできるような体制を整えています。
脳出血
脳の中を走る細い血管が破れて、脳実質内に出血を起こしたものを脳出血と呼びます。高血圧が長く続くと脳の中の細い血管壁がもろくなってしまうため、出血を起こします(高血圧性脳出血)。また高齢者の場合、脳の細い血管にアミロイドという異常たんぱくが溜まって血管の壁をもろくしてしまうことで脳出血を起こすこともあります(アミロイド血管症)
治療
出血を止めるために、血圧を下げる治療を行います。脳出血は脳のどこの部位にどれだけ出血したかが重要で、出血の場所と出血量によっては緊急で血腫を除去する手術を行うこともあります。
くも膜下出血
脳の表面にある太い血管にできた脳動脈瘤が破裂することで、脳の表面に出血が起こります。突然の頭痛で発症します。その特徴はいままで経験したことがない頭痛で、一瞬でピークに達するような頭痛です。そのような頭痛を経験したら緊急で(できるだけ救急車で)受診するようにしましょう。
脳卒中患者さんの受け入れ態勢
救急隊から脳卒中が疑わしい患者さんがいるという連絡が入り次第、受け入れ準備を始め、可能な限り迅速な治療を行います。救急部との密な協力体制のもと、患者さんが病院に到着と同時に頭部CTを撮影。脳梗塞と判断して血栓溶解療法の適応があれば、直ちにrt-PA(アルテプラーゼ)の静脈投与を開始。さらにMRIを行って血栓回収療法の適応を調べ、可能ならすぐに治療を開始します。少しでも後遺症がなくなるように、可能な限り迅速な治療を行っています。CTで脳出血・くも膜下出血がみつかれば、ただちに血圧を適正に調節しつつ、手術を行うか否かの検査に入ります。