宗教的理由により輸血を拒否される患者さんへの基本方針
当院では、基本方針の一つに「患者の権利を尊重し、説明と同意に基づいた医療を行います。」を掲げています。この理念のもと、宗教的理由により輸血を拒否される患者さんの手術・治療等にあたっては、できる限り輸血を行わないための努力及び患者さんへの説明と意思確認を行いつつ、以下の基本方針に基づき診療を行います。
1.18歳未満の児童では公的保護の対象となるため、生命に危機が及び、輸血を行うことによって死亡の危険が回避できる可能性があると判断された場合は「相対的無輸血」※1で対応します。
2.18歳以上の患者さんでも、できる限り輸血回避に努めますが、輸血以外に救命の手段がないと判断された時に、原則「相対的無輸血」※1で対応します。
3.1.〜2.の方針を十分に説明し、ご理解を得るよう努力いたしますが、どうしても治療方針に合意を得ることが出来ない場合には転医を勧めることがあります。
※1「相対的無輸血」と「絶対的無輸血」について
「相対的無輸血」とは、「患者さんの意思を最大限尊重し、可能な限り無輸血治療に努力するが、輸血以外に救命手段がない状況時には輸血を行う」という立場・考え方で、「絶対的無輸血」とは、「手術・治療にあたっては、輸血以外に救命手段がない事態になっても輸血をしない」という立場・考え方です。
※2輸血に関する医学的な考え方について
(1) 輸血の目的と輸血をしないことの不利益
輸血は、その目的が酸素を運ぶ血色素、止血に重要な血小板や凝固因子等の成分を即座に補うことにあり、現時点で他に代替できない治療法です。必要な輸血がなされないと救命が困難になるだけでなく、酸素不足により脳をはじめとした臓器が早期に障害されるため、たとえ救命できたとしても重大な後遺症が残る可能性があります。
(2) 輸血における合併症への十分な配慮
輸血に際しては感染症や免疫反応等の合併症が減るよう十分な対策を講じており、その頻度は経時的に減少しております。また、合併症に際しては治療法や補償制度があります。
詳細につきましては、必要に応じご説明いたします。
※3当院の基本的な立場について
当院は、救命救急センターとして地域の重症患者さんの受け入れを常時行っております。必要な輸血をせずに救命できなかった場合、残されたご家族はもとより、関わるスタッフ全員の心身に深刻な負の影響が想定されます。治療をともに進めるパートナーとして周囲への影響についてもご配慮をいただき、救命のための輸血につきご理解とご協力をお願いいたします。